林 生馬コラム Vol.003 <br/>「テキーラの涙 - ラグリマに秘められた魅力 -」 Background

林 生馬コラム Vol.003
「テキーラの涙 - ラグリマに秘められた魅力 -」

林 生馬コラム Vol.003 <br/>「テキーラの涙 - ラグリマに秘められた魅力 -」
Scroll

 


「ラグリマ・デ・テキーラ」という言葉があります。


スペイン語の会話の中では「ラグリマス・デル・テキーラ」と複数形で言うことが多いのですが、定義としての言い方は「ラグリマ・デ・テキーラ」で、「テキーラの涙」という意味です。


テキーラをフルート型のグラスに注いでクルクル回し、少し置くと、グラスの側面に涙のような縦の線がいくつも出てきます。これがラグリマ・デ・テキーラで、このラグリマが密に多く並ぶテキーラが、粘度の高いテキーラ、一般的には良いテキーラとされます。


テキーラの粘度は、アガベの栽培年数が長いほど、フィルタリングの回数が少ないほど、また100%アガベテキーラで高まります。クラセアスールのテキーラからも、かなりしっかりしたラグリマが出ますので、ぜひご覧になってみてください。


テキーラの涙 - ラグリマに秘められた魅力 - 



ラグリマとポートワイン 

ポルトガルの酒精強化ワインで、原産地呼称でもあるポートワインでも、このラグリマが重要視されていて、最も甘みが強く、贅沢な製法で作られるポートワインが「ラグリマ」と呼ばれます。

ラグリマは、ブドウの重みだけで自然に搾り出されたフリーラン汁(一番搾り果汁)のみを使用し、ブドウ本来の甘みとフルーティーな香味が凝縮され、粘度も高いのが特徴です。

このラグリマと呼ばれるポートワインを熟成した空樽も使用したテキーラが、クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディション2026です。

蒸溜酒の熟成にポートワインの空樽を使用する場合、ほとんどの場合「赤ポート」の空樽が使用されますが、クラセアスール ピンクは「白ポート」であるラグリマの空樽でフィニッシュ(追熟)させています。

最も糖度の高いフリーラン果汁から作られるラグリマの樽を使うことで、赤ポートの渋みや重さとは全く異なる、華やかで透き通るようなフルーティーな甘み、イチジクや蜂蜜、エレガントなフローラル香をテキーラに与えることができるためです。
このイメージは、まさにPINKです。

3種のテキーラをブレンドした「ホーベン」

クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディション2026は、樽熟成をしないプラタ、ラグリマポートワイン樽でフィニッシュしたアニェホ、アモンティリャードシェリー樽で丹念に熟成させたエクストラアニェホテキーラの3種をブレンドした「ホーベン」の造りとなっています。

ホーベン(Joven)とは「若い」という意味で、樽熟成期間の定義はなく、近年では絶妙にブレンドされたハイエンドテキーラでよく使われている言葉です。

プラタのアガベ由来の柔らかい甘みとシルキーなボディ感を中心に、ラグリマポートとアモンティリャードシェリーの花を2輪添えるような味わいと香りのストラクチャが、見事にエレガントなバランスとなっています。

フローラルでウッディ、ややジャムもある華麗な香りです。

蓮の花をイメージした2026年のボトル

このエッセイの第1回でもお話しした通り、ボトルの美しさはテキーラのアイデンティティです。

クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディション2026のボトルデザインは蓮の花をイメージし、今まさに花開こうとする蕾を表現しています。

開花するまでに必要な忍耐と内なる調和を象徴し、乳がんの早期発見の啓発と治療支援を目的とした今回のリミテッドエディションの趣旨も表しています。

中央のクラセアスールのエンブレムは、マザーオブパール(白蝶貝)を組み合わせていて、光の反射が大変美しくなっています。

毎年異なる「クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディション」のヴィンテージ 

クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディションはワインのように毎年発売され、いわゆるヴィンテージがあります。2016年から始まっており、毎年造りが違うのがとても楽しいテキーラです。

2025年のものは、オレンジワインの空樽でフィニッシュさせたエクストラアニェホ、ペドロヒメネスのシェリーの空樽でフィニッシュしたアニェホ、少量のプラタの3種から構成され、オレンジ、シナモン、バニラを感じる、テキーラでは珍しいタイプの香りのストラクチャを見せてくれます。

ボトルは釉薬を一部のみに流した、日本の織部焼や志野焼でも見られるような流し掛けで、見ても触れても楽しいボトルです。ピンク色の流し掛けは珍しく、メキシコならではです。

2024年ヴィンテージの力強い個性

2024年のものは、ポートワイン樽熟成のアニェホ、アメリカンウイスキー樽熟成のアニェホ、プラタの3種からなる構成で、ジャム、ウッディ、バニラ、ストロベリーを感じる大変力強い香りです。とても良いバランスで、私も個人的に好きな味わいのテキーラです。

ボトルには蛇があしらわれ、自らの尾を飲み込む丸くなった蛇は「ウロボロス」といって、生命の連続性や永遠を表す縁起の良いものです。ボトル底部はアガベの球形部「ピニャ」の柄となっており、ボトルデザインも中身に負けない力強いイメージです。

どのヴィンテージを選ぶか

どのヴィンテージを選ぶか、大変迷うところですね。2024年、2025年、そして2026年。それぞれに異なる樽やブレンド、香り、ボトルデザインがあり、同じ「クラセアスール テキーラ・ピンク リミテッドエディション」というシリーズでありながら、それぞれまったく違った個性を楽しむことができます。

どれを選ぶか迷うことも、このテキーラを楽しむ時間の一つなのではないでしょうか。

執筆者プロフィール

林 生馬(はやし いくま)

日本テキーラ協会 会長

1968年東京生まれ。 カリフォルニア州立大学にて映画製作を学び、帰国後は20世紀フォックスをはじめとする映画スタジオで製作スタッフとして活動。
ショーン・コネリー、ジョージ・クルーニー、北野武監督ら多くの著名人とテキーラを酌み交わす中で、その奥深い魅力に惹かれ、テキーラ文化の探究を始める。
これまでに訪問したテキーラ蒸溜所は100カ所以上にのぼる。
帰国後、日本テキーラ協会を設立。
主宰する「テキーラマエストロ講座」は、多くのバーテンダーやテキーラ愛好家から高い支持を得ている。
また、ブリュッセル国際コンクールをはじめとする世界的な酒類コンペティションで審査員を務めるほか、東京ウイスキー&スピリッツコンペティション(TWSC)には2019年の初開催より実行委員として参画。
日本メスカル協会顧問も務める。
著書に『テキーラ大鑑』(廣済堂出版)。
メキシコ大使館をはじめ各地でセミナーを開催するほか、テレビ・新聞・雑誌など各種メディアへの出演・掲載実績も多数。

林 生馬



ブログに戻る

テキーラの奥深い世界を探求するマガジン

Tequila
Mastery