毎年11月1日・2日にメキシコ全土で祝われる「死者の日(Dia de Muertos)」は、亡くなった家族や親しい人々の魂を、マリーゴールドや音楽、そしてテキーラで陽気に迎える伝統行事です。本コラムでは、死者の日の成り立ちと欠かせない6つのアイテム、テクノクンビアが鳴り響くグアダラハラの夜、そしてロスアルトス地方のアガベ農家で体験した忘れられない一夜まで、死を笑って迎え入れるメキシコの文化を紐解きます。
Dia de Muertos 死者の日
― テキーラとともに先祖を迎える夜 ―

死者の日(Dia de Muertos)とは
死者の日(Dia de Muertos)は、毎年11月1日・2日にメキシコ全土で祝われる、亡くなった先祖や親しい人々の魂を迎え入れて称える伝統行事です。2008年にはユネスコ無形文化遺産にも登録されています。
日本の「お盆」に近い趣旨を持ちながらも、厳粛に喪に服すのではなく、街中をマリーゴールドやスカルで鮮やかに飾り立て、故人の好物や音楽とともに陽気に歓迎する点が大きな特徴です。
死者の日に欠かせない6つのアイテム
2015年公開の007シリーズ第24作『007 スペクター』のオープニングや、2017年公開(日本公開は2018年)の映画『リメンバー・ミー』で死者の日を知った方も多いと思います。ここでは、死者の日に欠かせない6つのアイテムを紹介します。
オフレンダ(Ofrenda):メキシコらしい祭壇で、遺影、水(長い旅の喉を潤すため)、塩(清め)、キャンドル、コパル(お香)、そして場合によってはテキーラも並べられます。
センパスチル(Cempasuchil):鮮やかなオレンジ色のマリーゴールドの花。強い香りと色彩が、魂が迷わず家や墓地へ辿り着くための道しるべとされています。
カラベラ(Calavera):砂糖やチョコレートで作られたシュガースカルや、版画家ホセ・グアダルーペ・ポサダの風刺画から生まれた「カトリーナ(La Calavera Catrina)」です。このガイコツの女性は、死を忌避するのではなく、人生の一部として笑って親しむメキシコらしい象徴です。
パン・デ・ムエルト(Pan de Muerto):アニスやオレンジフラワーウォーターで風味付けされた伝統の甘いパン。交差した骨と涙の粒を模した生地が乗せられています。
パペル・ピカド(Papel Picado):繊細な切り絵を施した薄紙の旗。万国旗のようにつるして風に揺れることで魂の訪れを知らせ、祭壇を彩ります。
テキーラ・メスカル(Tequila, Mezcal):ご先祖様をもてなすために欠かせない、最も重要なアイテムのひとつです。特に「大人の魂が帰る日」とされる11月2日には、まずテキーラを地面に数滴垂らしてご先祖様に捧げてから、ゆっくりと味わう人もいます。
テクノクンビアが鳴り響くグアダラハラの夜
死者の日の夜は大賑わいです。私も何度も参加していますが、街中に音楽が朝まで鳴り響きます。最近大人気なのはクンビアという音楽で、テキーラ村を擁するハリスコ州で特に人気なのが、テクノクンビアというジャンル。日本でも耳にしたことがある方は多いと思います。
♪ドッッチャ ドッチャッ
♪ドッッチャ ドッチャッ
バッド・バニーなども多用する、あのリズムです。最近のグアダラハラ市はテクノクンビア一色で、本当に朝まで♪ドッッチャ ドッチャッが続きます。これに合わせてテキーラやパロマ、フローズンマルガリータを楽しみ、屋台でタコスを食べ、チチャロンという豚の皮を揚げたサクサクのスナックをつまみます。これだけ賑わっていても、泥酔している人をほとんど見かけないのも興味深いところです。
ロスアルトスのアガベ農家に招かれて
死者の日に、ロスアルトス地方の大規模なアガベ農家に招いていただいたこともありました。家は3階建ての立派なスペイン風の造りで、先述のオフレンダも高さ3メートルほどもある見事なものでした。
大きなテーブルには料理がたくさん並べられ、食事は最初こそ荘厳な雰囲気で始まりましたが、クンビアの♪ドッッチャ ドッチャッが始まる頃には、みんなすっかり陽気に。そこで、この家に伝わる「例の飲み方」をやろうという話になりました。
農家に伝わるワイルドな飲み方
野球のホームベースのような形をした大きな厚紙を渡され、これを持って外へ。外に出ると2階のバルコニーに若い女性が数名いて、2階から注がれるテキーラを、1階で厚紙を2つ折りにして口へ流し込むという、なんともワイルドな飲み方でした。
私は顔面に思いきりテキーラを浴びてしまい、全員が大爆笑。アガベを丹念に育てる農家の皆さんならではの、特別な風習です。皆のご先祖様も、きっと一緒に大笑いしていたと思います。
死を笑って迎える、メキシコの遊び心
人はいつか死を迎えますが、こんな遊び心を忘れずに生きていきたい。笑いながら、そう学ばせていただいた死者の日の一夜でした。
